昭和ノスタルジー居酒屋訪問シリーズ第5回は、いよいよ「鍵屋」。もちろん、ここは「昭和」どころではなく、創業は酒問屋としてなんと安政年間、建物も大正時代のものというから只々、恐れ入るばかり。この店は、歴史そのものである。最寄駅は鶯谷だが、住所は根岸。言問通りから一本入った静かな小道に建つ、黒板塀に囲まれたしもた屋風の建物で、ぱっと見、居酒屋らしくは見えない。入口の引き戸は開いている。つまり、店の中にはエアコンがないようだ。今日は雨が降っていて未だ8月にしては涼しい陽気なので助かるが、熱帯夜だったら団扇などで凌ぐのはしんどそう。尤も昔は全てこうだったと思えば、これもこの店の歴史的価値の一部であって野暮なことを言ってはいけない。
L字形のカウンターはほぼ埋まっていたが、先発隊のアユラシのお蔭で、我々ミニ同窓会3人は美味い具合に小上がりに座れた。店内を見渡すと内装や調度品のどれもこれも長い年輪を感じさせ、これだけで酔いそうだが、先ずはビールで、お通しの大豆の煮豆をつつく。肴には「うなぎのくりから焼き」から頂く。ほっこり香ばしく且つとろけるほど柔らかい。他に鶏もつ鍋、たたみいわし、みそおでん、合鴨塩焼きなどを注文。素朴ながらひと手間かけた料理でどれも美味しく頂く。酒を頼むと、辛口か、甘口かと聞かれるので、甘口をお燗で、とお願いする。よく見るとここには、櫻正宗、菊正宗、大関が置いてあるようだった。すると、出てきた燗酒は櫻正宗なのだろう。差しつ差されつ、看板になるまでゆったりとした時間を過ごした。店員も接客が柔らかく、どの雨傘がどの客のものかを確認してくれるなど、行届いた気配りがあってとても居心地が良い。今度はまた、寒くなる頃にでも来てみたい。 

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