松本城公園で地ビールを2杯ずつ飲んだ後、カミさんと二人でふらふらと大名町通りを南下すると、窓の無い蔵造りのような建物の入口に、「三城」と染め抜いた暖簾が掛っているのに気が付いた。そのような名前の有名蕎麦屋が松本にあるのは知っていたものの、こんなところにあるとは思わなかった。ふらっと入れるか自信がなかったが、えいっと入ってみると、薄暗い店内の奥に囲炉裏の様なテーブル(六人掛け)に男一人、右手の四人掛けのテーブルに女二人、手前の六人掛けのテーブル奥に女二人、都合五人の先客がいた。皆、黙々と食事中である。咳をするのも憚れるような張りつめた空気。奥から現れた和服姿の女将(?)さんから、予約しているかと問われ、していないと答えると、ではこちらにどうぞと云われ、手前の六人掛けのテーブルの右半分に着く。そのうち予約の男女二人組みがやってきて、奥の囲炉裏に通される。さらに続いて予約していない客が入って来たが、女将(?)さんにあっさりと、もういっぱいです、と断られる。次は2時半です、とも云っていた。少なくとも、詰め込めばあと七、八人は入れそうなのだが・・・。その後の客も同じように体良く断られていた。我々は幸か不幸か間一髪セーフだったようである。
この店では、お品書きがなくコース料理になっていること、酒を飲むかどうか問われること(飲まないと云えばお茶が出ること)、も知っていた。そのうち、女将(?)さんが、きのこのおろし和えが入った小鉢と共に、方口酒器と猪口をすっとテーブルに置いた。酒を飲むかとも、飲みたいとも話していないのに・・・。顔が赤かったのか、息がアルコール臭かったのか(実際、予約の二人組にはお茶が出されていた)。ともかく有難く頂戴する。なんとなく、どこの酒かを訊き難い、しーんとした雰囲気。ここは懐石風なのかも知れない。カミさんがスマホを構えるとすかさず、写真はお断りしてます、とガツンと云われる(下の写真はその前にこっそり撮りました。ごめんなさい)。次にそばつゆと薬味が二つずつやってくる(一つは蕎麦湯用か?)。何故二つなのか、訊きたかったが我慢した。やがてもり蕎麦がやってくる。イマドキにしては結構、太い麺で田舎蕎麦風。つるつるっと行き難いが、蕎麦の香りは高い。
蕎麦の後は漬物盛り合わせと、花豆の煮豆が出てくる。これは酒ではなく、蕎麦湯と共にいただくものらしい。これらを全て平らげ会計。一人2,000円であった。流石に蕎麦は美味かったので、安からず高からず、というところだが、この店限定の独特の空気(勿論、その殆どは女将(?)さんが醸している)を味わっただけでも安いと思わねばならぬ。ただし、我々の山岳会女子連が徒党を組んで入店するのはやめた方が無難であろう。

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