云わずと知れた超有名店。一昨年二月に起きた火災では、あの風情ある「かんだやぶ」の建物が無くなってしまったのかと、結構、ショックだった。その後、再建され昨年10月に営業再開したのはニュース等で聞いていたが、再開したてはさぞ混んでいるだろうと、暫く様子を見ていた。今回は満を持しての入店である。
あの板塀が無くなったのも聞いていたが、今の生垣もなかなか風情があるものだ。板塀より、こちらの方が良いくらいだ。庭は多少狭くなったようで、その分、店にゆとりが出来た感じがする。門を入ると、直ぐに花番が玄関の外に出て来て、テーブル席にするか、小上がりにするか訊いてくる。中途半端な時間のせいか、どちらも空いているようだ。
店の中は、以前の雰囲気とあまり変わっていないように感じる。通された小上がりは窓に面していて、外の庭木も、店内のテーブル席の様子も眺めることが出来て、良い感じだ。小上がりの客は皆、ゆっくり一杯やっている。一方、テーブル席の客は結構、頻繁に入れ替わっているように見える。 
ひととおりメニューを眺めた後、日本酒(菊正宗、1合770円)、あいやき(1,340円)、天たね(1,340円)を注文する。日本酒は、菊正宗しか置いていない。さすが、頑固一徹である。あいやきは、美味いのは確かなのだが、まるごと、ひと口でも食べられそうなほど少ないので、いくらこの店の雰囲気料が含まれているとは云え、少々お高い。まるで、ご祝儀相場(火事見舞金?)のようだ。それとも、合鴨の市場価格が高騰しているのだろうか。
天たねの中身は芝海老。鳥の巣のように丸くて厚みがあるスタイル。さぞや高温で揚げているのであろう、パリパリだ。中までしっかり揚がっているので、箸で割るとバラバラになってしまってやや食べ難い。最後はせいろう(670円)で締める。ここの麺はやや緑がかっているのが特徴(クロレラだっけ?)。蕎麦の香りは感じないが、つるつるしこしこ感は文句ない。
この店の魅力は、一にも二にもこの店の持つ江戸情緒である。かつての建物は失われてしまったが、新しい建物がその雰囲気を引き継ぎ、女将さんを始め、花番達の、語尾を伸ばす独特の発声や、料理メニューなど、この店のスタイルは今後もきっと変わらないだろう。またそのうち、江戸を味わいに来てみよう。 

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