大峰奥駈2日目は、弥山小屋から八経ヶ岳、明星ヶ岳、孔雀ヶ岳、釈迦ヶ岳を越えて、「前鬼」にある「小仲坊」までコースタイム8時間20分の道程。途中には、「靡(なびき)」と称される霊場(≒神仏が宿る場所)が数多あり、まさしくここは修験道の世界であり、それが現在でも生き続けているのだと実感できる。
途中で観える、小猫の耳のような七面山(反対側から観ると片側の耳は大岩壁だと気が付く)も「靡」のひとつで、鬼の棲みか(≒他界)なのだそうだ。ということは、あれは「猫の耳」ではなく、「鬼の角」なのか。
とにかく至る処に神仏の気配が感じられるが、特に大日岳を越えた先にある「第38靡 深仙宿」は、役行者がここで瞑想行を行うと、数多くの仙人や神々が現れたと伝えられている神聖な場所。実際、この場所に佇んでいると現世を忘れてしまいそう(このままあの世に往ってしまいそう)だ。かの西行は、ここで月を愛でて「深き山に澄みける月を見ざりせば思出もなき我身ならまし」と詠んでいる。
その役行者、全国様々な場所に祀られていて、神化した存在とも云えるが、その弟子として知られた前鬼、後鬼の子孫が営む宿坊が、今も「前鬼」という場所(かつては集落だったのだろうが、今は一軒だけ)にあり、これが今夜の宿「小仲坊」である。役行者から授けられた「大峰行者の修行を助けよ」という遺言を1,300年以上守り続けている訳だ。ちなみに「前鬼」も「靡」のひとつなので、ここはまだ俗界ではない。
ご主人(というか宿坊なのでご住職というべきか)は前鬼から数えてなんと61代目だという五鬼助(ごきじょ)義之さん。お会いしてみると気さくな方で、ご先祖が「鬼」であるとはとても思えない。
修行中の方3名(おひとりは東京在住の女性)も同宿。お気楽な我々は夕食を摂るといつものように忽ち睡魔に襲われ、午後8時にはもう布団の中。隣の部屋での修験者の方々とご住職夫妻との楽しそうな会話(修験者が楽しそうに語らうのもなんとなく不思議)は、その後も暫く続いていたようだ。
朝食時、五鬼助さんと行者の方との話に耳を傾けていると、関西で有名な「ビリケン」のモチーフはなんとご先祖の「後鬼」だったとのこと(詳しくはこちらの方のブログを参照願いたい)。まったくここにいると、俗界では観ないもの、聞かないことばかりだ。

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