或るとき、この頃秩父で蕎麦を手繰っていないなと、秩父関連のHPをつらつら眺めているうちに、ふと「こいけ」の文字が目に入り、9月末で閉店してしまったことを知った。なんと・・・、まことに残念。そのうちにまた行こう、行こうと思っていたが、もう、あとの祭り。結局、入ったのは一度きりとなってしまった。
「こいけ」は、云わずと知れた、秩父の名蕎麦店。もうひと昔前になってしまった2005年の暮れに、武甲山を登った後、「こいけ」に入ったことがある(その時の山レポはこちら)。当時は隊長がスイス駐在の頃で、この山行もタマちゃんと二人きり。当日は丁度、秩父夜祭の大祭当日だったせいか、武甲山山頂にいると時折、下の方からお囃子の音が聞こえて来たのを覚えている。
山から下りて、浦山口駅から秩父鉄道に乗ろうとすると、この鉄道では今まで見たことが無い程、人が乗っているのにびっくり。皆、祭りを見に行くのだろうが、電車が混んでいることもさることながら、浦山口から奥に、こんなに人が住んでいるんだ(失礼!)と驚いた記憶がある。
御花畑駅を出ると、道路脇には既にカメラの放列がスタンバイ。まだ祭りが始まるまで3時間もあるのにこの状態。腹ごしらえしたあとで、せっかくだから祭りでも眺めようか、なんて軽い気持ちでいたのが、あっさり粉砕された。この調子だと「こいけ」も、もの凄い状態ではないかと危惧されたが、とにかく恐る恐る行ってみた。
西武秩父駅からは10分足らず。うっかり通り過ぎてしまいそうなほど、目立たない店だが、古民家の前に人が並んでいるのでそれと判る。数えてみると、10名程(どうやら4組)が並んでいる状態。これならば、せっかくなので待つか、と覚悟を決めて後ろに並んだ。
待つこと、1時間余り。蕎麦屋でそんなに待ったのは、後にも先にもこの時だけ。やがて通された店内は、飾りが殆ど排除され、質素な古民家的内装。この雰囲気だけでちょっとグッとくる。テーブル席と小上がりがあったが、我々は二人掛けのテーブルへ。先ずビールで喉を潤した後、日本酒と焼き味噌と天ぷらを注文した。
ここの焼き味噌は甘からず、辛からずで丁度良い。日本酒と焼き味噌との相性が、これほどいいものかと大感激したが、ここの店主も、越生の「梅乃里」の店主と同様、足利一茶庵の創業者、片倉康雄氏(Woodyさんのお兄さん?と思う程良く似ている)に師事しただけあって、焼き味噌も良く似ている。
締めはせいろを注文。つゆは辛めの江戸前風。細打ちのせいろ蕎麦は、香りも佳し、コシも佳し、歯触り・喉越しも佳しの、云うこと無し。二人で感動していた。結局、それっきり。その後のあっと云う間の10年間、2回目の訪問をしないまま閉店となってしまった。実に心残りである。やはり、行けるときに行っておかないと後悔する、とつくづく思った。

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