キハ110系は通常、小海線では、ほのかに緑がかった白とダークライムグリーンのツートンカラーだが、羽黒下駅へやってきたキハ110系はいわゆる柿色だった。珍しいなと、あとで調べてみると、小海線開業80周年記念事業の一環として、キハ110形キハ110-121を柿色(通称、首都圏色、あるいはタラコ色)に塗装変更したようだ。鉄ちゃんにとっては、旧国鉄時代を彷彿させるためウケがいいようである。小生は別段、心躍ることは無い。
車内はそこそこ客がいて、まるごと空いているボックス席は見当たらないので、ボックス席にお一人だけ先客がいたところへお邪魔する。我々よりはひと回りぐらい上の方の様子。流石に目の前で、いきなり酒盛りを始めるのも気が引けるので、コップをリュックサックの中へ仕舞ってすましていると、そのうち我々に、何処の山に行って来たのか問うようになり、話が段々、自らのひとり旅について伺うようになる。富士宮在住とのこと。曰く、いつも青春18キップで周遊しているのだが、昨今、第三セクターの路線が増えてきたため余計に金が掛かるし面倒だ、と。
この御仁、昔からの乗り鉄のようである。青春18きっぷは当然、JR区間でないと役に立たない。昨今、北陸新幹線が延伸したせいで、並行する在来線(信越本線)が「しなの鉄道」や「えちごトキめき鉄道」などと云う第三セクターの運営になってしまった。そこを経由しようとすれば、その区間、別料金を払わなくてはならない。それが困りものだと仰る。我々も、けしからぬ話ですね、と相槌を打つ。
話はやがて上越線に移り、上越新幹線が出来ても、上越線が第三セクターにならなかったのは、上越新幹線が旧国鉄時代に出来たせいらしい。だが、そのおかげかこの頃は1日4往復しか走らない超ローカル線になって乗り継ぎが難しいと零す。
それでも、鉄道旅は楽しい、旅の友はカップ酒、もう既に飲み干してしまった、と仰る。なんだ~、それを早く云って欲しかったな~、なんて言葉はおくびにも出さず、いそいそとリュックサックから、山の残り酒が入ったボトルとコップを取り出し、更に話が弾んだことは、云うまでも無い。

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