この季節、勝沼ぶどう郷駅は結構、利用客が多い。ぶどう狩りの客に加え、今日は我々以外にもシャトールミエール帰りの客もいるので、かなりの賑わい。ホームのベンチはもちろん、多くの客が立ったまま上下線の列車を待っている。
まだ日没前、いつもながら、このホームからの眺めはすこぶる良い。ホーム西側の、甲府盆地とその上にそそり立つ南アルプス(残念ながら今日は霞んで見えないが)の大展望は云うに及ばず、東側の甲州高尾山から源次郎岳に連なる峰々も、スケールは小さいながらも味わいある眺めである。
東側に見える山の主役はやっぱり甲州高尾山だろうか。いわゆる「へ」の字を左右反転させたような形に見えるので、一度覚えたら忘れない。実はこの逆「へ」の字の形容は、実業之日本社刊「甲斐の山旅・甲州百山」における蜂谷緑氏の紀行文からの受け売りである。何故か度々、山火事が起る不遇の山だが(最近では2009年)、そのお陰で山頂からの眺めは良い。
この頃は甲州高尾山を差し置いて、その北側にある棚横手が「山梨百名山」に認定されてしまったせいで(何故、棚横手が選ばれたのか解せない。山頂そのものだってぱっとしないし、「県民に親しまれている、全国的な知名度がある、歴史や民俗との関わりがある」との選定基準に相応しいとも思えない)、人気度はいまいちのようで、棚横手まで登る尾根上の通過点にすぎなくなった感がある。時として、山は人間の気紛れに翻弄される。
ともあれ列車が来るまで多少時間があるので、酒を取り出してホームに座り込み、甲州高尾山を眺めつつちびちび呑む。少なくとも、酒の肴には十分なりうる。酒を呑みながら、さて立川に着いたら何処で仕上げるかと考える。それもまた、肴のひとつだ。

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