アユラシと二人で、およそ30年ぶりに「根津の甚八」に行ってみた。不忍通りから一本裏に入っただけで、とても静か。辺りに普通の民家が結構多い。30年前は年配の男主人が店を切り盛りしていたが、暫くして店を畳んだらしい。この男店主は閉店時間(たぶん9時だったように思う)になると何の前触れもせず、パシッと天井の照明を消すので、客はもう帰らざるを得なかったのを鮮明に覚えている。閉店後は5年ほどそのまま放置され、今の女主人が店を受け継ぎ再開、それから18年経つのだと聞いた。
カウンターは7席ほどで、奥に8畳の小上がりがある小じんまりした店。築100年以上という建物の歴史がもつ、独特の空間と時間の流れがここにはある。カウンターの照明は白熱電球2個のみ。折り紙などが飾ってあるところが、如何にも女性の店主らしい。エアコンはあるが、入口の引き戸を開けておくと、意外に爽やかな風が入ってくる。この建物は夏は結構涼しいが、冬は隙間風が入ってとても寒い、と店主は仰る。ビールはアサヒとキリンがあるが、日本酒は秋田の太平山のみ。他に焼酎(その名も「根津の甚八」)などもある。肴は美味しそうなのが並んでおり、そのなかから、わた入りイカ干し、鯖の燻製、鶏ささ身の燻製と煮玉子をいただく。どれも美味で日本酒に良く合い、ついつい酒が進む。
先客は何れも一人客で3名。その後、入れ替わりでもう1名。それぞれ酒にまつわる興味深い蘊蓄話を聞かせてくれ、何方も居酒屋に関して拘りと一家言をお持ちとお見受けした。この店にして、この客あり、といったところか。隣のお客から肴のお裾分けまでいただく。店主も、興が乗ると色々話を聞かせてくれる。ここ根津で店を始めるには様々な苦労があったらしい。根津という土地は京都のように、他人に対してはとても冷たいところだが、いったん知り合いになるととても温かいとのこと。隣近所と知り合いになるまで10年かかったとも。
大人数でワイワイやるのではなく、ここだけの空間と時間を肴に、ちびりちびりと酒を飲むことが、この店のなによりの贅沢だと思われる。
(残念ながら店内はスマホ(Galaxy S3)画像なので、鮮明さはご容赦願いたい)

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